第十区画

【コメントにお答えします】
さて、ココからは上記文章の公開後に幾つかのコメ
ントをいただいた内容についての見解を追記していく
ことにします。
■「私が原発の歴史を調べたところ、半分以上が事
故を起こしていました。」
この原発の歴史という資料の出所が記されていない
ので私は確認のしようが無いのですが、確かに海外
ではトラブルの発生率は日本の10倍程度あります。
従ってトラブル件数が多いのは正しいと思いますし、
私も同認識です。
しかし、全世界の原子炉(2000 年12 月31 日現在、
世界の31 か国で430 基の発電用原子炉が稼動)半数
以上で「事故」が起きているというのは多すぎるような
気がします。
私としてはどういった歴史の書き方がされているのか
気になる所です。もしかしたら事故の件数には原子力
潜水艦の原子炉や実験炉まで入っているのではない
かと推測するのですが。
ただし、例えば「給水ポンプ電動機の故障による停
止」を、予備機が起動して原子炉側に問題は無かった
にも関わらず「事故」と呼ぶのであれば、確かに半数
以上「事故」を起こしていると言えるかもしれません。
私の認識では原子炉の安全性に影響のない設備、例
えばタービン発電機廻りの「故障」と原子炉の「事故」
は違うと考えていますので、認識が違うかもしれませ
んね。
■「原発は閉鎖しただけで撤去されてません。」
その通りです。
海外では解体よりも閉鎖を選択しています。解体す
るより放って置いた方が楽ですしコストもかかりません
ので。
しかし、日本では解体撤去を基本方針にしています
し、現に実施していますので、閉鎖保管をする事はな
いという事を書いたつもりですので、自分の書いた内
容は間違ってはいないと思います。
■「ずっと安全安全っていってるけど、事実被害者
がいる」
さて。ここで言われている被害者というのは、海外の
話でしょうか、それとも国内の話でしょうか。
海外であればチェルノブイリ、スリーマイルアイランド
と、確かに被害者が居ると思います。
ただし、チェルノブイリの場合は故意に安全システム
を切って、不安定だと解っていたにも関わらず低出力
運転を行ったのが原因ですから、故意におこされたモ
ノとも言えますので、私は「設備事故」というよりは「人
災」だと認識しています。
それらの「被害があった実績があるから安全じゃな
い」という事であれば、それは認めます。
ただし、同じ事が起きないように改善しながら進めて
いるというのは間違いないです。
意見が分かれるのは
「改善し続けているから同じ事故は起きない。」
「改善しても別の事故が起きる。」
という2点だと思います。
改善後に大事故が起きる確率を大きいと見るか、小
さいと見るかの違いですね。
ある意味、ここの認識については平行線になるのか
もしれないです。
また、国内では原発では無いですが、JCO で被曝死
傷者が出ています。
ですが、国内の原発で被曝による死傷者は出てい
ないはずです。ただしこの場合「原発での就業経験が
ある人がガンで亡くなった」という事はカウントに入れ
ていません。因果関係が立証されていないというのが
理由です。最終的には確率論に成ってしまうんですが、
ガンによる死亡率に有意な差が無いということですか
ら。
原発職員でなくてもガンになる人はたくさん居るわけ
です。「原発で働いたからガンになる」という事が証明
されていないですから、私は問題ないと考えていま
す。
あと、「安全安全と言っている」というのはそうかもし
れませんが、自分としては「『こうなっているから』大丈
夫です」と「安全の理由」も一緒に書いているつもりで
す。
■「ずっと平行線で永久に終わらない」
見解については平行線な部分は確かにあると思い
ます。
ですが、誤った内容を訂正している部分は平行線と
いう問題ではなく、単に事実を述べているに過ぎませ
んので、その点は勘違いされないようにお願いしたい
です。
例えば最終処分の問題について私は「将来的に解
決させる」と思っていますが「解決出来ない」と断言さ
れた場合、そこは平行線になってしまいます。
ですが、「放水口の放射能を測るとすごいです」とい
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う記述に対して「実際に公開されているデータをみれ
ば、そうではないですよ」と書いている部分は平行で
はなく、事実を述べているに過ぎないという事です。
私は「原子力をやるならば、反対意見の要因をクリ
アして行かねばならない」と考えています。
そんな事出来るわけないと思われるかもしれません
が、「これが問題だから反対です」と言われたら、その
問題を解決して「解決しましたよ」って言って、そうやっ
て次の問題が提起されて、それをまた解決していく。
イタチごっこのような物ですが、最終的に全ての要
因を排除できれば、完璧にかなり近づくのではないで
しょうか。まぁ実現確率は無理と言えるレベルかもしれ
ませんが、「平行線の元を消していく」というのが私の
スタンスです。
また、次世代エネルギーの確保等によって、原子力
を続ける必要がなくなった場合も議論は終りになると
思います。
■「ボクの手元には電力会社が自己申請した原発の
単価(バカ高い)があります」
原発の単価を見ると確かに高いです。4000億円くら
いします。(公開資料より)
これは電力自由化のおかげで、目下もっと安くする
為の原価低減努力を続けている所です。
お陰で重電産業界とそれに付随する産業が大打撃
を受けていると言う話もありますが・・・
ですが、例えばJPEA 太陽光発電協会
http://www.jpea.gr.jp/1/1-17.htm
によると、太陽電池パネルは簡易システムで1kW の
ものが130~160万円、蓄電池付きだと200~230万円
するそうです。
ここでは大量生産効果による価格の低下と原発に匹
敵する安定供給のための蓄電池やインバーター付加
による価格の上昇を考慮して、トータルで最も安いモ
デルで考察する事にして、1kW あたり130万円としま
しょう。
原発の新規プラントは135万6千kW で4000億円く
らいです。(東京電力発表より)
従って、太陽電池パネルで同じ電気出力を得る設備
建設費は1356000 ×130 万円=17,6280,000 万円。つ
まり、約1 兆7600 億円かかるわけです。
しかも太陽電池パネルは夜間は発電できませんし、
快晴でなければフルパワーになりませんから、実際の
稼働率を考えると年間発電電力量の差はかなり甘く見
積もっても3倍以上になります。
メンテナンスについては回転機が多い原子力は大
変かもしれませんが、数が多い分パネルのメンテナン
スも大変です。ガラスは頻繁に掃除しないと発電効率
が下がってしまいますから。
もちろん原発は被曝を伴いますし、燃料費もかかる
のでその分を差し引く必要があると思いますが。
あとメンテナンスは必要ですが、プラント寿命が原子
力60年(但し一部修理交換が必要)に対して、太陽電
池は強化ガラス保護の高級なユニットで約20年です。
(ちなみに安いシールドガラスだとヒョウ等で割れる場
合がありますので個人で購入する時は注意してくださ
いね。)
寿命差を無視したとしても、一年間に原発一機分と
同じ電力を太陽電池で起こそうとしたら、約5 兆2800
億円かかるわけです。原発について燃料費を考慮し
てもこれほど高くはならないでしょう。
そして、実際は更にこれだけのパネルを設置する
為に莫大な敷地が必要ですから地価まで考慮すると
それこそとんでもない金額に成ります。
ですから、かなり甘く見積もっても「5兆円以上かかる
太陽電池パネルがバカ高い」というのであれば解りま
すが、数字だけを見て「4千億円の原発プラントがバカ
高い」というのはどうかと思いますよ。
4000億円という数字は確かに私もイメージできませ
ん。数字としてはデカ過ぎますから。
でも、他の自分が判るレベルのものと比較してイメー
ジする事はできるのではないでしょうか。こういった多
角的なモノの見方は重要だと思います。
■「原発の歴史=事故りまくり」
原発の事故の歴史については、確かに数々の事故
があったと思います。その歴史を否定するつもりはあり
ません。
ですが、その事故の度に改善の努力が続けられて
います。
ここで少し別の視点を考えて見て下さい。原発以外
の物の事故の歴史をご存じでしょうか?
ロケットの打ち上げ失敗の数、炭坑、工場、化学プラ
ント事故の数、鉄道、航空機事故、小さなものでは自
動車事故、火災、たくさんの事故が起き続けていま
す。
実際、人類の歴史は事故の歴史でもあります。
事故が起きて、学習して、同じ事故を繰り返さないよ
うに対策して今があるのではないでしょうか。
まぁ、学習をしても繰り返す火災(寝タバコは危険だ
と解っていながらやって火災になる)等の事例もありま
すが、少なくとも原子力について、チェルノブイリ事故
と全く同じ事故がもう一度起きる事は無いと思います。
阪神大震災の経験を経て、高速道路の橋脚の強化
工事もされたわけですが、この改善でもまだ信用でき
ないと言うのであれば、誰も高速道路を走らないでしょ
う。
-31-

しかし、みんな走っています。
これは改善によるリスクの減少を受けて、リスクと利便
性を計りにかけ、結果、使おうという結論を出している
わけですね。もっとも元々ろくにリスクを考えもせずに
走っている人の方が多いでしょうけども。
原発で事故が起きる確率は確かにゼロではありませ
ん。更に万一大事故が発生した場合の、影響も非常に
大きなものです。でもその事故の確率は限りなくゼロ
に近いものだと私は思っています。
「過去のミスを繰り返さないように対策を繰り返して行
く」のが事故の歴史に対する私の姿勢です。
■「たくさんの原発被害を訴えるサイトがあります。
あなたはこれを全て否定できますか?僕はしてほ
しくないです。」
私も全てを否定するつもりはありません。
実際、自分も含めて差別被害にあっているという話
は事実ですから、その事実を否定するつもりも全くあり
ません。
現に正しい事実を元に反対意見を述べているところ
もあります。そういった所の意見を読むと、自分として
は「そこを改善していかないといけないんだな」と思い
ますし「改善していこう」と行動します。
究極的な私の願いはあくまでも『誤った認識を無くし
たい』と言う事だけです。
今回の一件で解って戴けたと思いますが、原発反
対・被害を訴えるサイトや記事には明らかに「事実と異
なる事が書かれている」場合があるわけです。
データを見れば海が汚染されていない事も、原発付
近住民が被曝なんかしていない事も客観的に解るで
しょう。原発の見学に一度でも来れば、認識はかなり
変わると思います。
誤った知識は否定して行こうと思いますし、以前から
してきたつもりです。
以前、99年6月8日付けのFLASH 誌に『原発廃棄
物放射線濃度データ改ざん極秘データ!』という記事
が掲載された時も、明らかにおかしい内容だったので
説明を掲載しました。
(現在は苦情による削除要請に応じて削除済み)
また、Y2K 問題についても「Y2K で原子炉が暴走す
る危険がある」というデマが流れたので、構造上、コン
ピューターが原因で原子炉が暴走する事はありえな
いという事を説明していました。
(現在は苦情による削除要請に応じて削除済み)
ただ、Y2K では一部プラントで制御棒の位置表示を
する画面が見えなくなるというトラブルはありました。で
も、これも別の装置で見る事が出来ましたし、原子炉
の暴走には関係無いものでした。
そういう意味では自分は当時、プラントの構造を事実
に基づいて説明して、「原子炉はY2K で暴走しませ
ん」と正しい事を書いたと思っています。
原発被害を訴えるサイトとして、もしみなさんが私の
この説明以前に先ほどの「本当の原発を知って欲し
い」を読んでいたら、あれをそのまま鵜呑みにして誤
解していたのではないでしょうか?
現場では素人が手抜き工事をしていて、ろくに検査
もされず、海には放射性物質がばら撒かれ、作業員は
被曝してガンになり、でも被曝している事を作業監督
が巧みに隠している。
原子力検査協会という天下りの機関がずぼらな検査
をしている。
そう信じて疑わなかったのではないでしょうか?
ですが、そういった事は仕組みとして起きないし、現
に起きていない事は、客観的なデータや事実をもとに
お解り戴けたと思います。もちろん全文全てを納得し
て戴いているとは思っていませんが、少なくとも海の
汚染等についてはご理解戴けたと思います。
私は現場で見た事を、自分の目で見た事実に基づ
いて書いています。自分で見れるんですから、見た事
を書けるわけです。
そして、わざわざウソを書いたりもしていません。
後でウソだという事がバレたら『最終的に損するのは
自分』ですから。
全てを否定する気はありません。あくまでも、『事実を
知って欲しい』と、それだけなんです。
■「あなたの文面を見た限り、まだまだ現場を知ら
ない。だから、安全といえるのだと思います。そし
て現場を知らない限り、ずっと安全といい続けると
思いますから。全部知って結論を出してほしいで
す。」
このご意見は少々手厳しいお話ですが、同時に
少々心外でもありますね。
別にケンカを売るつもりはありませんが、私はこのご
意見を戴いたご本人の素性を知りません。
学生さんなのか、事務職の方なのか、それとも役所
の方なのか。実は私と同じ原発職員の方なのか。そ
れも新人作業員なのか、ベテラン管理員なのか。
ですから「まだまだ現場を知らない」と言われると実
に困ります。
私の上司はこの道30年のベテランです。
その課長に「まだまだ解ってないな」と言われて、自
分が知らない過去の経験談などを聞くと、「まだ知らな
い事があるんだな」と思います。
確かに私が現場に入るよりずっと以前の状況を体感
する事はできませんので、過去を知っている人の話は
新鮮な事もあります。確かに私の知らない過去がある
ことは確かだと思います。
しかしです。
私は平成6年から今までずっと7年間原発の現場に
従事しています。
7年現場を見ていて、しかも原子炉格納容器の中を
這いずり回るような作業もしてきたんです。
ハッキリ言って自分の担当プラントのどこの放射能が
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強くてどこが弱いのか等は熟知していますし、現在の
現場の状況も自然に見聞きして知っています。
そんな私に「まだ現場を知らない」と言われるからに
は、私以上に現場を知っている必要があるわけです。
そうでなくては「こいつはまだ解っていない」と言う事を
認識する事はできないでしょう。
文面から現場を知らないと言われているわけですが、
では私の知らない「実際の現場」がどんなものなのか
を実際にご存知なのか。
もし、実は現場で20年以上も作業にあたっていて、
私の知らない現場を知っている方がコメントされたの
であれば、お話をお聞きします。
しかし、もし、新聞やネットで見た、また聞きの知識
だけを根拠に私が「現場を知らない」と言われるので
あれば、それは心外というものです。
逆に自分の「原発の現場」という認識が誤っていて、
今まで本当の事を知らなかったのではないか? とは
考えられないでしょうか。
漠然と「原発は危険なモノだから、現場を本当に知っ
ている人なら原発は危険だと言う『はず』だ」とお考え
になってはいないでしょうか。
「現場を知らない限り、ずっと安全といい続ける」とい
う文章はそれを表しているように思えます。
『原発の現場は危険に違いない』という「自分の認識
の中における事実」の根拠が本当に客観的な「事実」
に基づいたものであるかどうか、今一度確認していた
だきたいと思います。
それは実際に体験した事ではなく、マスコミやネット
の記事による「根拠の不透明な情報」に基づいたもの
ではありませんか? その「情報」が事実である裏付け
の情報はありますか?
それが重要なんです。
間接的に得られた情報が事実である事を確認する
のは困難ですよね。
実際自分もネットで得られた情報については常にそ
の情報の発信源が信頼の置けるものかどうかを確認し
ながら見ています。
先ほどの太陽電池の値段にしても、信頼できるサイト
の公開情報だという認識の元にお話しています。似た
ような情報を扱っている他のサイトも見て、事実に相違
ない事をチェックしてから扱ってます。
テレビのニュースや新聞の記事でさえも、実際に記
者を知っていると「結局は普通の人が書いているんだ
な」という認識を持てます。
媒体が広範囲に公開されるので凄いような錯覚が
ありますが、実際に記事を書いているのは結局のとこ
ろ人間なんです。
報道される内容についても、その反対側の意味を考
えてみたり、自分がその当事者だとしたらどうだろうか
等を考える癖をつけるといろいろと多面的なモノの見
方ができるようになると思います。
えぇ、話が脱線しましたので戻します。
まず、「もっと現場を知るべきだ」というご意見には同
意します。
もちろん、私はこれからも原子力を続けていく上でも
っと多くのことを学んで行こうと思っています。
研修も現場対応も積極的に参加しているつもりです
し、トラブル情報等も本店・発電所に周知される情報は
全てチェックしています。
もっともっと原子力を知って、上司のような本物の『ベ
テラン』になりたいと思っていますから。
やっぱりベテランは問答無用にカッコイイです。
「あの人に聞けば何でもわかる」と言われるのは実に
憧れます。ですからもっと勉強もしますし、経験も積も
うと思います。
ですが、同時に今現在の私は「今までの文章を書く
だけの裏付けになる経験と知識」は持っていると自負
しています。
もちろん原発を安全に運転する為の知識として、過
去の事故やトラブルの情報も普通の人より遥かに多く
持っています。現場も直接見て触れています。
それらを総合的に判断して、私は「原子力のリスクは
小さいと言える」と考えているわけです。
決して現物を知らずに、噂や誰かの話を聞いただけ
で判断しているわけではありません。
また「全部知ってから結論を出して欲しい」という話
は逆に私からも言いたい事です。
現実の原発を知らずに、噂と事実関係が不透明な
情報だけで原子力を否定する事は止めて欲しいと思
います。反対するならもっと現物や事実として裏付け
の有る情報を知り、その上できちんとした理由をもって
反対して欲しいと、こう思うわけです。
以上、少々気分を害される部分もあったかもしれま
せんが、自分としては正しい事を言っていると思って
いますので、どうかご容赦ください。
私の言う事を全て信じろとは言いませんが、せめて
裏付けのある話だけはご理解いただきたいと思いま
すし、逆に裏付け無い情報については、ある程度疑っ
てかかるくらいのつもりで反対意見・賛成意見を問わ
ず見て戴きたいと思います。