第六区画

【プルトニウムとリサイクル】
■「プルトニウムはどんなに微量でも肺ガンを起こ
す猛毒物質です。プルトニウムはこの世で一番危険
なものといわれるわけですよ。」
プルトニウムは放射性物質です。確かに半減期も長
いです。ですが、ここで問題視されているのはアルフ
ァ放射線を出す事で、決してサリンや砒素などのよう
な、物質特有の毒性を持っているわけではないんで
す。
同じ放射性物質の中でプルトニウムだけが猛毒扱い
されるのは、アルファ線を放射する為に内部被曝した
場合に、強い影響力があるからです。
アルファ線は紙一枚で遮る事ができる放射線です。
しかし内部に取り込んでしまうと遮蔽物が無いので、ア
ルファ線を直接浴びてしまい、これがガンを引き起こ
すのではないかというわけです。
しかし、それを言い始めると、アルファ放射線を出す
物質は他にもありますから、それらも猛毒扱いしなけ
ればならなくなるでしょう。
確かにアルファ核種を扱うのは注意が必要ですが、
だからと言ってプルトニウムを取り立てて猛毒扱いす
る必要は無いと、私は思います。
また、アルファ放射線は紙一枚で防げるものですか
ら、内部被曝さえしないように注意して扱えば透過力
の強いガンマ線を出すものより扱いは簡単です。例え
ばα 線を出す放射性物質をドラム缶に入れてしまえ
ばドラム缶自体の外部放射能は『ゼロ』になります。
■「しかし、日本のプルトニウムが去年(一九九五
年)南太平洋でフランスが行った核実験に使われた
可能性が大きいことを知っている人は、余りいませ
ん。フランスの再処理工場では、プルトニウムを作
るのに核兵器用も原発用も区別がないのです。だか
ら、日本のプルトニウムが、この時の核実験に使わ
れてしまったことはほとんど間違いありません。」
確かに日本の使用済み核燃料の再処理はフランス
のコジェマ社とイギリスのBNFL で行っています。
ですが、あくまでも依頼しているのは再処理であっ
て、再処理後の回収プルトニウムと、放射性廃棄物は
まるまる日本に帰ってきます。
見方によっては日本の使用済み燃料から抽出され
たプルトニウムがフランスで使用されたと見る事もでき
るかもしれませんが、最終的に再処理した分は日本に
帰ってくるんです。
これは海外派兵をせずに、アメリカに金を払って、
「救援物資に使ってくれ」と言っているのと同じような話
です。結局はアメリカの国庫に収まった時点で兵器購
入資金と見分けがつかなくなってしまうんです。あくま
でも見方だけの問題だと思いますし、無意味な議論だ
と思います。
■「もし、日本政府が本気でフランスの核実験を止
めさせたかったら、簡単だったのです。つまり、再
処理の契約を止めればよかったんです。」
再処理されてしまっているものの契約を止めたとして、
それで核実験を止めさせる事が本当にできると思わ
れますか? 私はそうは思えません。
核実験の実施という高度に政治的な意味を含んだ事
態は、日本の再処理どうこうというレベルの話ではない
と思います。
■「普通の原発で、ウランとプルトニウムを混ぜた
燃料(MOX燃料)を燃やす、いわゆるプルサーマ
ルをやろうとしています。しかし、これは非常に危
険です。分かりやすくいうと、石油ストーブでガソ
リンを燃やすようなことなんです。原発の元々の設
計がプルトニウムを燃すようになっていません。プ
ルトニウムは核分裂の力がウランとはケタ違いに
大きいんです。だから原爆の材料にしているわけで
すから。」
「いくら資源がない国だからといっても、あまりに
酷すぎるんじゃないでしょうか。早く原発を止めて、
プルトニウムを使うなんてことも止めなければ、あ
ちこちで被曝者が増えていくばかりです。」
プルサーマルについては別途解説文がネット各所
に存在しますので、そちらを参照願います。
なお、既に現在の炉心内部でもウランから生成され
たプルトニウムが一緒に反応していますので、MOX
を使用したとしてもプラントに有意な影響はありませ
ん。
また、石油ストーブでガソリンを燃やすのともイメージ
が違います。プルトニウムが含まれていてもガソリンの
ように引火性が高いわけでもないですし爆発もしませ
ん。強いて言えば「レギュラーガソリンの代わりにハイ
オクを入れる」になるかと思います。
また、原爆の材料と言っても濃縮度(爆弾99% 以上、
核燃料4% 程度)などの使用形態が全く異なりますし、
プルトニウムの核分裂によって発生するエネルギーと
ウランによるエネルギーはそれぞれ約200MeVでけた
違いではありません。
蛇足ですが一般に海水中に含まれている重水素は
水爆の原料になります。要は原料をどのように加工す
るかが問題なわけです。
■「日本には途中でやめる勇気がない。世界では原
発の時代は終わりです。原発の先進国のアメリカで
は、二月(一九九六年)に二〇一五年までに原発を
半分にすると発表しました。それに、プルトニウム
の研究も大統領命令で止めています。あんなに怖い
物、研究さえ止めました。」
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これについてはご存知の方も多いと思いますが、カ
リフォルニアで電力危機を味わったアメリカは再び原
子力に対して推進の立場に転じています。
停止した原子力発電所も次々と再起動しています。
アメリカのブラウンズフェリー1号機は17年の停止期間
を経て、各部修理点検後の2007年5月に運転を再開
される事が決定しています。
これが少なくとも現状を支える為にも原子力発電所は
必要なのだという証拠なのではないでしょうか。
ドイツは確かに原発を止める決定を下しました。これ
は原子力発電に反対する緑の党が政権を握った為、
公約を実行しているものですが、代わりに隣のフラン
スから原子力発電によって作られた電力を購入してい
るというのも有名な話です。
そして、まさにドイツでは緑の党が政権から離脱する
動きがあり、これに伴って脱原発政策を見直す動きが
あります。
また、仮に原子力発電の時代が終わったとして、代
替はどうなっているでしょう?
代わりに風力を使うという話があります。確かに風力
は有力なクリーン発電方法だと思います。推進には私
も賛成しています。
が、これには安定した供給が出来ないという最大の
問題があります。
電力の需要は刻々と変化します。電力会社はその変
化に合わせて発電機の運転を調整しています。
ですが風力は不必要な時に停止させる事は出来て
も、風が無ければ必要な時に出力を出す事ができま
せん。風が一定の強さで吹きつづければ出力は安定
しますが、吹いたりやんだりする風の場合は出力が変
動します。
発電機の数を多くすれば一部で風が止まっても他で
は吹いてるのでトータル発電量は安定するという議論
もありますが、それは風の合計が変わらない場合の話
です。広範囲で風が弱い時には全体平均の出力が低
下してしまいます。これでは安定した電力供給が出来
ないのです。だから、風力は補助的に使うとしても、主
力にはなり得ないと思います。
■「どうして日本が止めないかというと、日本には
いったん決めたことを途中で止める勇気がないか
らで、この国が途中で止める勇気がないというのは
非常に怖いです。」
これは「やめる勇気がない」のではなく「やる必要が
ある」という事だと思います。
アメリカで原子力発電が再開されるように、現実にこ
の世界を支える為に、まだ原子力は必要なエネルギ
ーだと思います。だから続けるんです。
そして、もし、原子力に代わるもっといい発電方法が
実用化されたら、その時になって初めて乗り換えれば
いいわけです。
■「日本の原子力政策はいい加減なのです。日本は
原発を始める時から、後のことは何にも考えていな
かった。その内に何とかなるだろうと。そんないい
加減なことでやってきたんです。」
このお話にあるとおり、先を考えずにいい加減に
『現状を支えている原子力をやめる事はできない』と、
こう思います。
原子力を進める上では、確かに問題を先送りにして
きた経緯があります。
実際に進みが遅くて困っているのが現状です。それ
でもやっと六ヶ所村の再処理施設の稼動が見えるとこ
ろまでやってきたんです。やっと国内で核燃料リサイ
クルが成立する目途が立ってきたという所です。遅々
としてはいますが、確かに進んではいるのです。先送
りにしてきた部分がやっと進んできています。
しかし、「先送りにしてこれた」のは、あくまでも再処
理、廃棄物処理と言った、「事後の処理に関する部分」
だった事を忘れてはいけないと思います。
ここで原子力をまず止めて、代替電源の確保を先送
りにしたらどうなってしまうか。電力不足が現実のもの
に成ることは明らかです。
■「いままでは大学に原子力工学科があって、それ
なりに学生がいましたが、今は若い人たちが原子力
から離れてしまい、東大をはじめほとんどの大学か
らなくなってしまいました。机の上で研究する大学
生さえいなくなったのです。」
確かにこれも問題として取り上げられています。
実際に詳細調べたわけではないのですが、確かに
原子力を研究する学生は減っているそうです。
もっとも、学生人口自体が減っているわけですからあ
る程度は仕方ないとも思いますが、確かに忌々しき事
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態だと私も思います。
しかし、東大から「原子力工学科」は無くなっているよ
うですが「システム量子工学専攻科」という名称で大学
院には原子力を研究する部門がちゃんと残っていま
す。東大で原子力の勉強が出来なくなったというわけ
ではないと思います。
■「メーカーでさえ、原子力はもう終わりだと思っ
ているのです。」
これも極端な話だと思います。
確かに原発立地が進まず、火力プラントのリプレー
ス(建て替え)が多い今、人員をそちらに割くのは当然
だと思います。
ですが原子力部門を無くすという動きはどこにもあり
ませんし、現に部門が存在します。
というわけで、別にメーカーが原子力を終わりだと思
っているという見方は出来ないと思います。