第七区画

【廃棄物処理と廃炉処置は?】
■「具体的な廃炉・解体や廃棄物のことなど考えな
いままに動かし始めた原発ですが、厚い鉄でできた
原子炉も大量の放射能をあびるとボロボロになる
んです。」
原子炉は内部に試験片と呼ばれる原子炉材料と同じ
材質のものを入れてあって、これをサンプリングして試
験する事で、原子炉本体の材質の状態を確認してい
ます。(公開資料より)
従って、原子炉本体の劣化は確実に検出する事が
出来ます。その結果から、原子炉がボロボロには成っ
ていない事が確認できるわけです。
それから、いわゆる応力腐食割れ(SCC)の問題に
ついては、現在では材質を変更して対策してあります。
この対策によりプラントの耐用年数が大幅に延びてい
ます。
■「放射能がゼロにならないと、何にもできないの
です。放射能がある限り廃炉、解体は不可能なので
す。」
これについては前述の通り、化学除染等により線量
を大幅に下げる事が可能となっています。
従ってゼロになるのをただ待たねばならないという
わけではありませんし、解体ではありませんが、実際
に原子炉内構造物であるシュラウドの交換作業も実施
され、原発の殆どの部分が交換修理可能である事も証
明されています。
■「最初に耐用年数が十年といわれていた原発が、
もう三〇年近く動いています。そんな原発が十一も
ある。くたびれてヨタヨタになっても動かし続けて
いて、私は心配でたまりません。」
耐用年数10年とは随分短い話ですね。建設コストの
元が取れないのではないでしょうか?
その後の解析によって、現在ではなんと寿命は60年
行けると言われています。
もちろん然るべき補修やモーター、ポンプなどの交
換を行いますが、原子炉本体は炉材のサンプリング分
析の結果、まだまだ充分大丈夫な事が判っています。
(公開資料より)
従って、言われるほど「くたびれてヨタヨタ」には成っ
ていないというのが現状のようです。
■「なぜ、原発は廃炉や解体ができないのでしょう
か。それは、原発は水と蒸気で運転されているもの
なので、運転を止めてそのままに放置しておくと、
すぐサビが来てボロボロになって、穴が開いて放射
能が漏れてくるからです。原発は核燃料を入れて一
回でも運転すると、放射能だらけになって、止めた
ままにしておくことも、廃炉、解体することもでき
ないものになってしまうのです。」
これも誤った見解だと思います。
実際、シュラウド交換工事の時に原子炉及び付属配
管の水を全部抜いてプラントを一年近く停止していま
す( 公開資料より)が、酷い錆びなんか出てないです。
もちろん穴も開いてませんし、放射能だって漏れてま
せん。
というか、それを言ったら火力プラントだって同じよう
に水や蒸気が流れているわけですよ。常識で考えて
みても、配管系が停止してスグにボロボロになるはず
が無いです。
従って停止も解体も出来ないという話も誤りで、現在
東海発電所で既に停止、解体、廃炉処置を実施中で
す。廃炉解体は可能である事は実際に証明されてい
ます。
■「これから先、必ずやってくる原発の閉鎖、これ
は本当に大変深刻な問題です。近い将来、閉鎖され
た原発が日本国中いたるところに出現する。これは
不安というより、不気味です。ゾーとするのは、私
だけでしょうか。」
先ほども書きましたが現在日本原電東海発電所では
閉鎖ではなく解体が進められています。更に先日敦
賀1号機の廃炉解体も決定しました。
ついでに言うと、実験炉である「JPDR1」も解体され、
今では原子炉跡地は更地になっています。
確かに解体は時間もかかって大変な作業のようです
が、現に解体が実施されているわけですので、この閉
鎖に関する心配は不要かと思います。
■「低レベル放射性廃棄物、名前は低レベルですが、
中にはこのドラム缶の側に五時間もいたら、致死量
の被曝をするようなものもあります。」
区分が数値化されて明確なわけではないので「低レ
ベル廃棄物のなかで最も線量の高いモノ」と言うのは
明確には解りませんが、参考としてIAEA の区分によ
れば低レベル放射性廃棄物というのは2mSvから
20mSvの線量当量のあるものを言うそうです。
この区分を適用するならば、最大で20mSvのドラム
缶の脇に5時間居ると100mSvとなりますから、やはり
5時間で致死量というのは話が合いません。
この話も真偽がはっきりしないです。
■「日本が原発を始めてから一九六九年までは、ど
この原発でも核のゴミはドラム缶に詰めて、近くの
海に捨てていました。その頃はそれが当たり前だっ
たのです。私が茨城県の東海原発にいた時、業者は
ドラム缶をトラックで運んでから、船に乗せて、千
葉の沖に捨てに行っていました。」
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これ、本当なんでしょうか?
もし真実なら、これは大きな問題だと思います。
それこそ世界的な論議になると思いますし、千葉近
海だって調査しなければなりません。
現実問題として、国際的にも『海洋投棄は、日本にお
いては実施されていない。』とされています。
海洋投棄問題については、日本海にロシアが海洋
投棄を行ったという話は周知の事実で、これについて
は様々な調査もされました。この調査では特に影響は
ないという結果が出ています。
また、「北大西洋でOECD/NEA 協議監視制度の
下で、英、仏、西独等により1967年から1982年にかけ
て海洋投棄が実施されたが1983年以降は行われて
いない」という情報を聞いています。
さて。ここで私、ちょっと冷静に考え直してみたんで
すが。日本原電敦賀1 号機と関西電力美浜1 号機運
転開始は1970 年。東京電力福島第一1 号機の運転開
始は1971 年です。従って、電力会社の原子力発電所
はまだ出来ていませんから69 年にはまだ廃棄物が
発生していません。
だとすると、1969年まで日本が海洋投棄をしていた
という話は1966年に運転開始した東海発電所のガス
炉か、それ以前の実験炉のものという話になります。
当時の実情は私には知る由もありませんが、少なくと
も現在では海洋投棄は国際的にも禁止されています
し、ドラム缶も番号管理されて存在場所が管理されて
いますので、今後も公式にも非公式にも実施される事
はないと思います。
■「一体、三百年ももつドラム缶があるのか、廃棄
物業者が三百年間も続くのかどうか。どうなります
か。」
300年もつドラム缶というのは難しいでしょう。
確かに剥き出しのままであれば、ドラム缶はどうして
も錆びたりしてくると思います。
しかし「処分」された段階で、ドラム缶はそれを並べ
たコンクリートピットごとコンクリートで埋め込んでしま
いますので、ドラム缶は完全にコンクリート詰めされ
た状態になります。コンクリートと一体となった状態で
すので錆びなどは問題にならないと思います。
このような処分方法は「浅地中処分」と呼ばれていて、
既に実施されています。
■「もう一つの高レベル廃棄物、これは使用済み核
燃料を再処理してプルトニウムを取り出した後に
残った放射性廃棄物です。これはどろどろの高レベ
ル廃棄物をガラスと一緒に固めて、金属容器に入れ
たものです。この容器の側に二分間いると死んでし
まうほどの放射線を出すそうですが、これを一時的
に青森県の六ケ所村に置いて、三〇年から五〇年間
くらい冷やし続け、その後、どこか他の場所に持っ
て行って、地中深く埋める予定だといっていますが、
予定地は全く決まっていません。」
これは概ね正しいです。
高レベル廃棄物処理の最終的な方策は処分方法こ
そほぼ決まった(ここでは割愛しますが詳細は経産省
でパンフレットを作って説明しています)ものの、埋設
地が見つかっていません。
原子力発電最大の問題と言えると思います。
これは今後絶対に解決する必要がありますが、正直
言って頭の痛い問題である事この上ないです。
原子力発電をやるべきだと思っている自分自身、こ
の問題だけはどうにも反論出来ない部分として引っか
かり続けています。
もう、それこそ私の家の地下に埋めれるものなら埋め
て欲しいと本気で思っているくらいです。
■「原発自体についても、国は止めてから五年か十
年間、密閉管理してから、粉々にくだいてドラム缶
に入れて、原発の敷地内に埋めるなどとのんきなこ
とを言っていますが、それでも一基で数万トンくら
いの放射能まみれの廃材が出るんですよ。生活のゴ
ミでさえ、捨てる所がないのに、一体どうしようと
いうんでしょうか。とにかく日本中が核のゴミだら
けになる事は目に見えています。早くなんとかしな
いといけないんじゃないでしょうか。それには一日
も早く、原発を止めるしかなんですよ。」
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原子力発電所の解体廃棄については既に放射性廃
棄物として処分する部分と、通常の産業廃棄物や再生
コンクリートとして使用できる部分などについて決まっ
ています。
原子力安全委員会の報告書では「放射線量が年間
0.01ミリシーベルト以下なら人体に影響がないと判断
し、一定の廃棄物中に含まれる放射能の上限を物質
ごとに定める」としていて、この基準に従えば、110万
kWプラントの解体廃棄物合計55万トンのうち53万ト
ンは一般廃棄物扱いになり、それ以外の2万トンが放
射性廃棄物として処理される事になるわけです。
確かに数万トンの放射性廃棄物が出ると言えますが、
見方によっては放射性廃棄物として処理する必要が
あるのはプラント解体廃棄物全体の3.6%だけであると
も言えます。
しかしながら、解体までに密閉管理を5年か10年行
うという話はどこにもありません。解体に5年から10年
かかるのではという話なら聞いたことがありますけれど
も。
また、変な話、今原発をすぐに止めたところで、解体
廃棄物の量は変わらないと思いますが。
早く止めたからといって「なんとかなる」わけじゃ無
いように思います。
■「『お聞きしていいですか。今、廃棄物を五〇年、
三百年監視するといいましたが、今の大人がするん
ですか?そうじゃないでしょう。次の私たちの世代、
また、その次の世代がするんじゃないんですか。だ
けど、私たちはいやだ』と叫ぶように言いました。
この子に返事の出来る大人はいますか。」
確かにこの生徒の意見ももっとも思えるかもしれませ
ん。確かに廃棄物問題は我々の世代だけでは解決で
きません。次の世代。そのまた次の世代へと受け継が
れる問題になります。
ですが。
考えてみて下さい。福島第一原子力発電所1号機は
1971年に運転を開始しました。私はその年に生まれま
した。私が生まれた時、原子力発電は始まっていまし
た。
そして今、私はその福島第一原子力発電所1号機に
も携わって仕事をしています。
これはある意味既に2 代目に引き継がれていると言
えるのではないでしょうか。
私が育ってきた今までの間、私は知らず知らずのう
ちに原子力発電による電力を使って生きてきました。
今の自分の生活があるのは原子力発電によって支え
られている部分がある事も学生時代には理解していま
した。だからそれについて引き継がなければならない
部分があることもある意味理解していたと思います。
今、原子力発電所があるのは何故か。それは原子力
発電が新しいエネルギー源として必要だったからでは
ないでしょうか。オイルショックもあり、石油依存から脱
却する必要もあったでしょう、近年ならCO2削減問題
にも関わる事でしょう。
必要があって今ある。それは確かに自分が生まれる
前から自分の知らないうちに造られたものかもしれま
せん。でも当時それらを動かし始めた人たちは少なか
らず未来の為に、恐らくは当時子供であり、今は大人
になった我々の生きる時代の為にと思って原子力発
電を始めた部分もあるだろうと、私は思います。
そして、現在、実際にそれに支えられている現実が
ある。
ならば、その利益を享受してきた世代であり、そして
今を支えられている我々にはそれを引き継ぐ義務が
あると思います。自分たちが始めた事じゃないからと
言って無視していい物ではないと思います。
昔の大人たちは将来の子供達の為に、すなわち今
の自分達の為に頑張って作ってくれたんだと、そう思
うんです。
そして昔の大人達だって、自分達以前の大人達が
残した厄介ごとを解決しながらやってきたわけですよ。
僕らから見た大人達は、その前の大人達がしでかした
『戦争』という厄介ごとの後始末もやらされてきたんで
す。
それに比べれば今の我々や、我々の一つ下の世代
の引き継ぐモノの何と軽い事か、と思うんですがどうで
しょうか。
結局誰もが前の世代のことを好むと好まざると引き継
いできたんです。それが歴史なんです。
確かに今となっては、「先送りで俺たちに後始末を押
し付けて」と文句を言う人も居るでしょうし、「原発を作
って欲しいなんて俺は言ってない」という人も居るかも
しれません。
でも私はこれを受け継いで、なんとか問題も解決し
つつ、将来的にもエネルギー不足になる事無く文明を
維持していけるようにしたいと思っています。
嫌なモノ、面倒なモノを引き継ぐのは嫌だと言うのは
簡単です。
でも、引き継ぐべきもの、引き継がねばならないもの
と言うのは、原子力に限った事ではなく、いろいろな
分野にあると思います。
地球温暖化問題だって、石油をあんなに大量消費し
た結果ですし、オゾンホールだって、便利だって事で
フロンを使いまくった結果です。
当時子供だった我々は、「そんなの大人がやった事
だ」と言えば確かにそう言えてしまうでしょう。
でも、誰も故意に面倒な問題を残そうとして残してる
わけじゃないんですよ。
気がついたら遅かったり、知らなかったりした。ある
意味、人間のやる事なんだから仕方ない部分もあるん
じゃないですかね?
それに、現状を拒絶した所で、事態は何も好転しま
せん。対策を我々の世代がやらなければ、更に先の
将来に、更なる悪影響を残してしまうでしょう。それは
回避したい。
だから面倒な問題も引き継いで、我々が何とかしな
ければいけない。目前に現実に問題がある以上、逃
げる事は出来ないんです。
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文句を言っても誰も対処できません。自分たちが対
処するしかありません。大人に文句を言うのはかまい
ません。でも処理は結局自分たちがしなければならな
い。
もし本当に引き継ぐのが嫌なら、自分たちの世代で
それをやめるようにするしかないでしょう。
温暖化問題対策をしたくなければしないというのもそ
の世代の意思です。実際にアメリカなんかは現在の繁
栄を維持する為にCO2削減計画を無視しようとしてい
るわけですし。
その結果、将来地球がダメになったとしてもそれは
その世代が選んだ道なんですから。
もちろん、そんな事をしたら次の世代に猛烈に文句
を言われるでしょう。それは「自分達より更に前の世代
が悪いんだ」なんて言っても通用なんかしません。今
の大人たちがちゃんと対処してくれなかったからだと、
子供達は訴えるでしょう。そう、今まさにその生徒さん
が言ってのけたようにです。
私なら彼女には以上の話をしたいと思います。
そうやって時代は引き継がれるものなんですから。
その鎖を断ち切るとしたらそれは自分達自身だって事
を言ってあげたいですね。
ただし、同時に自分たちがした事は未来の子供達に
今の自分同様に評価される事になると言う事も解って
もらいたいと思います。
さて、話が横道に逸れすぎました。話を戻します。
■「それに、五〇年とか三百年とかいうと、それだ
け経てばいいんだというふうに聞こえますが、そう
じゃありません。原発が動いている限り、終わりの
ない永遠の五〇年であり、三百年だということで
す。」
これはその通りだと思います。
原子力発電を続ける限り、廃棄物処理だってずっと
続きます。でもこれはやはり原子力発電に限った話で
はないと思います。
アスファルトの道路を使う限り永遠に補修を続けなけ
れば成りませんし、産業が存在する限り産業廃棄物は
発生しますし、人間が今のような生活を続ける限りゴミ
は出続けます。
人間が生きている限り、永遠に問題が尽きる事はあ
りません。
大きな視点で見ればそういう見方もできると思います
が、どうでしょうか。